こんにちは、日本バリスタ協会(JBA)公認のバリスタのにっしーです。
今回のテーマはプライスカードの読み方です。
豆屋さんやカフェなどで、コーヒーの詳しい情報が書かれたカードを目にしたことってありますよね。
例えばこういうのです。
でもこのカード、たくさんの情報が書かれているけど、中には「それって味にどう関係するの?」っていうのも多くありませんか?
というのも、私がビギナーだったころも、情報の意味がよく分からないまま豆を買い続けていました。^^;
案の定、あまり好みに合わないコーヒーに当たってしまうことが何度もあったんです。。。
せっかく新しい豆を買ったのに、それだとちょっと悲しいですよね。
でも実は、カードに書かれた意味がちゃんと分かれば、ある程度どんな風味のコーヒーに仕上がるかを予想することができるんですよ。
どうせなら、自分でしっかり納得して豆を買いたいですよね。
そうすれば、あなたがおいしいコーヒーに出会える確率もぐっと高くなりますよ。
そこで、ここでは、日本バリスタ協会公認バリスタのにっしーが、プライスカードの説明文の読み方と風味の関係を詳しく解説していきます!
重要な項目から順に紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね^^
では、さっそく始めましょう!
焙煎度
焙煎度とは、コーヒー豆の焼き加減のことです。
「浅煎り」「中煎り」「深煎り」という言葉をどこかで聞いたことありませんか?
まさにあれが焙煎度です。
プライスカードには「焙煎度」という表記の他、「Roast (ロースト)」と表記されることもありますよ。
では、最初に紹介したプライスカードの例を見て、どんなふうに書かれているか確認してみましょう!
「シティロースト」と書かれていますよね。これが焙煎度です。
プライスカードや説明文では、焙煎度を8段階に分けた名前で書かれることが多いです。
下の表がその一覧なので、おぼえておくと便利ですよ◎
さて、これで焙煎度を見分けることが出来るようになりましたね。
では次に、肝心の風味についてみていきましょう。
実は、この「焙煎度」、コーヒーの味と大きく関係しているんですが、その関係性はとてもシンプルです。
それは「焙煎が深くなればなるほど苦みが強くなる。逆に焙煎が浅ければ浅いほど苦味は弱くなり、酸味が前に出てくる。」ということです。
「深く焼く」は言い換えると「たくさん焦がしている」ということですよね。なのでその分苦くなります。イメージしやすいですよね◎
以上のポイントを押さえれば「焙煎度」の理解はバッチリです。
では、次の項目に進んでみましょう。
生産国
「生産国」は文字通りコーヒーが生産された国を指します。
大抵は商品名の中に国名が書かれていので比較的見つけやすいですよ。
「Country(カントリー)」や「Region(リージョン)」と表記されることも多いです。
最初の例ではこの部分に書かれています。
さて、生産国の見かたはわかりました。
「じゃあ、どの国がどんな味なの?」ってなりますよね。
実は現在、生産国によって風味を予想することは難しくなっています。
なぜかというと、各国で新しい生産方法が次々と考え出されているからです。
一昔前だと、国やエリアごとに生産している品種や生産方法がある程度決まっていたため、「この国の豆はこういう風味のはず。」と予想することが出来ました。
しかしここ数年は、同じ国の中で数多くの製法が取り入れられ、様々な風味を持つコーヒーが生産されるようになりました。
そのため、国名だけで風味を判断するのが難しくなってきているのです。
とは言っても中には、その国特有の風味を持つ豆もいくつかありますので、代表的なものを覚えておけば、プライスカードを読み解くヒントになりますよ。
●特有の風味を持つ生産国の例
ケニア産の豆はトマト思わせる独特の青っぽい香りが含まれていることで有名です。また、浅煎り~中煎りで華やかな酸味を感じられ、人気のある産地の一つです。
インドネシア産の中でもスマトラ島で生産される「マンデリン」には、麦を思わせる穀物っぽい香りやスパイス、土っぽいとも表現される独特のフレーバーがあります。なんだかエキゾチックな気分にさせてくれるコーヒーです。
以上が国特有のフレーバーを持つ産地の例です。
気になるものがあったら、ぜひ豆屋さんで探してみてくださいね◎
では、次の項目を見ていきましょう!
「スペシャルティコーヒー」という表記
「スペシャルティコーヒー」とは、世界的なコーヒー専門の鑑定機関で一定の評価基準をクリアしたものだけに与えられる称号のことです。
つまり「スペシャルティコーヒー」と書かれているということは、それだけで高い品質が保証されているということになるわけですね。
では、カードの表記例を見てみましょう。
こんな感じで書いてあることもあれば、説明文の中に書いてあることもありますので、よく探してみてくださいね。
さて、では肝心の風味との関係ですが、「スペシャリティコーヒーだからこういう味!」というものはありません。
最初にお伝えした通り、他と比べて”高品質な豆”という位置づけなので、その豆の持つ個性がより際立ったっているというイメージを持ってもらうといいかと思います。
例えば、香りがより複雑で華やかだったり、その国の持つ風味の特徴がより強く表れているといった感じです。
ちょっと難しい話になりましたが、「スペシャルティコーヒー」と書かれたコーヒーを選ぶと、より高品質な豆と出会いやすいということですね。
スペシャルティコーヒーの他に「プレミアムコーヒー」「コモディティコーヒー」「ローグレードコーヒー」という区分があります。
日本のコーヒー豆屋さんに並ぶのはほぼ「コモディティコーヒー以上」のモノです。
上の図からもわかるように、スペシャルティコーヒーと名乗れるのは全体のたった5%ほどの選ばれしコーヒー達です。
数値からもその希少さが伝わってきますね。
精製方法
精製方法とは、コーヒーの実から豆を取り出す方法のことで「プロセス(Process)」と表記されることも多いです。
では、プライスカードにはどのように書かれているでしょうか?例を見てみましょう。
「Natural」と書かれているのが見えますね。
これは、精製方法のうちのひとつで「ナチュラルプロセス」という精製方法が使われているという意味です。
実は同じ国も豆でも、この精製方法が違うだけでかなりコーヒーの風味が変わって来るんですよ。
ただ、種類も多く複雑なので、ビギナーの方にはちょっと取っ付きにくい部分なんですよね。
ですが、実は今販売されている豆は、3つの精製方法のどれかで生産されていることがほとんどなんです。
なので、この3つさえしっかりと押さえておけば、おいしい豆に出会える確率がぐっと高くなりますよ。
- ナチュラルプロセス(Natural Process)
- ウォッシュトプロセス(Washed Process)
- アナエロビック(Anaerobic / Anaerobic fermentation)
では、順にみていきましょう。
|ナチュラルプロセス(Natural Process)
収穫したコーヒーの実を果肉がついたまま乾燥させてから豆を取り出す方法で、乾燥中に果肉の甘みが豆に浸透して、果実感のあるフルーティな風味に仕上がると言われています。
ストロベリーやブルーベリー、トロピカルフルーツなどの風味が出やすい精製方法です。
|ウォッシュトプロセス(Washed Process)
収穫したコーヒーの実の果肉を機械で取り除いた後、水を使って表面のぬめりを洗い流し、乾燥させる精製方法で、果肉が無い分クリーンですっきりとした風味が出やすいと言われています。
レモンやオレンジなどの柑橘系の香りやハーブを思わせる風味を持つコーヒーが多くあります。
|アナエロビック(Anaerobic / Anaerobic fermentation)
近年注目されている新しい精製方法で、コーヒーの実をタンクに入れて密閉し、酸素がない状態で発酵させます。
この発酵によって、熟したベリーやワイン、ウイスキーを思わせる風味を持つコーヒーが精製されます。
発酵させる菌や工程によっても風味が変わるので、今後さらに多くの風味が作られていくと思いますよ。
ここまでで代表的なプロセスの特徴を解説しました。
どれか気になるものはありましたか?^^
個人的にはフルーティなコーヒーが好きなので、ナチュラルプロセスのコーヒーをよく飲んでいます◎
さて、最初にもお話ししましたが、プロセスに関しては、とりあえずこの3つを押さえておけば大丈夫です。
ここからは、限られたエリアで行われているちょっとニッチな精製方法を簡単に紹介したいと思います。
気になる方は読んでみてくださいね◎
- スマトラ式(インドネシア)
機械で果肉を取り除いた後に少しだけ乾燥させ、豆を保護する薄皮も機械で除去したあとさらに乾燥させる方法。独特のスパイス感や麦感、土っぽい香りがつくことで有名です。 - パルプドナチュラル(ブラジル)
果肉を機械で除去してから乾燥させる方法。ナチュラルに比べて果実感が少しやわらぎクリーンな味わいになりやすいです。ちょうどナチュラルとウォッシュトの中間みたいな感じですね。 - ハニープロセス(コスタリカ)
果肉を少し残した状態で除去し、その後乾燥させる方法。どの程度果肉を残すかによって乾燥した時の色が違うのも特徴的です。色が濃いものから順にブラックハニー、レッドハニー、イエローハニー、ホワイトハニーと呼ばれ、果肉が多い方がより果実感が強くなります。
受賞歴
コーヒーの表示の中には、まれに受賞歴が書かれている場合があります。
実は、あまり知られていませんが、世界ではコーヒーの風味を評価する品評会が数多く開催されているんですよ。
その中でも最も有名なのがCOE(Cup of Excellence カップオブエクセレンス)と呼ばれる品評会で、世界でも指折りの審査員が繰り返し評価を行い、受賞者が決められます。
つまり、これを受賞している豆は間違いなく高品質で、豊かな風味を持っていると言えるわけですね。
受賞した豆には、以下のようなロゴマークがついているので、見かけたときはチェックしてみるといいですよ。
なかなかお目にかかれないレアな豆ですが、その味はまさに折り紙付きですので、気になる方はぜひ探してみてくださいね◎
ちなみに、値段の方も折り紙付きですのでご注意ください^^;
標高
「標高」もカードによく書かれている項目です。「Altitude(アルティチュード)」などと書かれたりもします。
さっそく例を見てみましょう。
これですね。
当然、コーヒーが採れた標高を表しているんですが、「それがどうしたの??」って感じですよね。
実は、標高はコーヒーの品質と密接にかかわっています。
と言ってもその関係性はとてもシンプルで、高いところで採れたものほど高品質とされています。
なぜかというと、コーヒーは寒暖差が大きいほどよく育つという特徴があるからです。
そのため、気温差の大きい標高の高いエリアでは高品質の豆が収穫できるわけですね。
なので、プライスカードにはよく標高が書かれています。
多くのコーヒーは標高が700m ~ 2,000mくらいの場所で採れますが、その中でもより標高が高いものを選ぶと良い豆に出会いやすくなりますよ。
一概には言えませんが、個人的な感覚では標高が1,000mを超えてくると良い豆が出揃ってくる印象ですね◎
農園
最近では、どこの農園で収穫されたものかが表記されている豆が多くなっています。
よくスーパーなんかで、「生産者の顔が見える野菜」が売られていますが、まさにあれと同じですね。
カードでは「農園」や「Farm(ファーム)」などと書かれます。説明文の中に書いてある場合も多いですよ。
例えばこんな感じです。
コーヒー生産国の多くでは、いくつもの農園で採れたコーヒー豆をひとつにまとめて輸出していることが多いです。
そのため、どの豆がどこで採れたものかなのかわからないことが多いんですよね。
しかし、最近では、個別に農園と取引される場合も増え、作られた農園までたどることが出来るようになってきました。
いわゆるトレーサビリティ(追跡可能性)というやつですね。
さて、それでは次に風味との関係を見ていきましょう。
農園名が書かれていたら、コーヒーの味にどのような影響があるのでしょうか?
実は、そういった個別で取引される農園は独自の生産方法に力を入れていたり、受賞歴があったりなど、高品質の豆を生産している場合が多いです。
なので、農園名が記載されている豆を選べは、個性豊かで高品質な豆に出会える確率が高くなりますよ。
また、お気に入りの農園を見つけて「今年の出来はどうかな?」なんて考えながら飲んでみるのも楽しいですよ◎
品種
実はコーヒーにも品種がたくさんあります。
お米で言うところの「コシヒカリ」や「あきたこまち」みたいな感じですね。
例えば、「ブルボン」「ゲイシャ」「ティピカ」「カトゥーラ」などが有名どころなんですが、何となく聞いたことのある名前もありませんか?
たまにコンビニなんかでも、「ブルボン種100%使用」みたいな感じで出されていたりしますよ^^
さて、それでは話をプライスカードに戻しましょう。
実際のカードではこのように書かれています。
「品種」の他に「variety(バラエティ)」と書かれることもあります。
さて、たくさんの品種がある中で、ここ数年特に注目されているのが「ゲイシャ種」です。
パナマで作られたゲイシャ種が品評会で高い評価を受けたことをきっかけに、世界的なブームとなりました。
ちなみに、名前の由来は採れた地域名から来ていて、日本の「芸者」とは一切関係ありません。笑
このゲイシャ種は「ゲイシャフレーバー」と言われる独特な香りを持っていて、これまでとは一味違ったコーヒーを楽しませてくれます。
気になる方は豆を選ぶときに品種も一緒にチェックしてみてくださいね。
少し値段は高くなりますが、一度飲んでみる価値はアリですよ◎
認証
認証とは、様々な目的をもとに活動している団体の評価基準をクリアしているという証です。
コーヒーの場合は、「自然保護」や「生産者の地位向上」などを目的にしているものが多いですね。
これらの認証を受けたコーヒーには「認証マーク」が付けられます。
例えばこんな感じですね。
特徴的なマークが多いのでわかりやすいですよ。
さて、肝心の風味との関係ですが、マークの有無が風味に大きく影響を与えるということはありません。
しかし、コーヒーを取り巻くすべての環境に対して、大きく影響を及ぼしていると言えるかもしれませんね。
下にある4つは、コーヒーでよく見かける認証マークです。
こういった活動に関心の高い方は豆を選ぶときも是非チェックしてみてください◎
レインフォレスト アライアンス
レインフォレスト・アライアンスは、自然を保護し、農業生産者と森林コミュニティの生活を向上させるために社会と市場の力を用いることで、より持続可能な世界を創造しようとしています。
RAINFOREST ALLIANCE
有機JAS
農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本として自然界の力で生産された食品を表しており、農産物、加工食品、飼料、畜産物及び藻類に付けられています。
農林水産省
バードフレンドリー
熱帯の森林を利用したシェードグロウン(木陰栽培)かつ有機栽培で生産されたコーヒーをプレミアム価格で買い取ることで、生産農家を支えなが ら森林伐採も防止し、そこで休む渡り鳥を守るプログラムです。
BIRD FRIENDLY
フェアトレード
開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」をいいます。
FAIRTRADE
まとめ
ここまででコーヒー豆のプライスカードに書かれている情報の見かたを紹介してきました。
最後までお読み頂きありがとうございます。
少し難しい部分もあったかもしれませんので、最後に要点をまとめておきますね。
頭の中の整理にぜひお役立てください!
重要度★★★
- 焙煎度(ロースト Roast)
豆の焼き具合のこと。
>焙煎が深い → 苦みが強く、酸味が弱い
>焙煎が浅い → 酸味が強く、苦みが弱い - 生産国
豆が採れた国のこと。
生産国によって風味を判別するのは難しいが、特徴がはっきりした国もある。
>エチオピア → 「モカ香」と呼ばれるベリー系の香り
>ケニア → トマトのような青っぽい香りと華やかな酸味
>インドネシア → 麦、スパイス、土っぽいと表現される独特の香り - 「スペシャルティコーヒー」という表記
「スペシャルティコーヒー」は厳しい評価基準をクリアしたものだけが名乗ることを許される。高品質であることの証拠になる。
重要度★★☆
- 精製方法
コーヒーの実から豆を取り出す方法のこと。
これによってコーヒーの風味も変わって来る。
>ナチュラル → 果実感や甘さが出やすい
>ウォッシュト → クリーンですっきりした味わいで柑橘系の香りが出やすい
>アナエロビック → 最近注目されている新しい精製方法。ベリーやワイン、ウイスキーのような香りが出やすい。 - 受賞歴
コーヒーの品評会で受賞歴があるものは高品質の豆であることが保証されている。
特にCOE(Cup of Excellence カップオブエクセレンス)が有名で要注目。 - 標高
標高が高いほどコーヒーの実は大きく育つ。
そのため、標高も高品質の豆を見分ける基準となる
重要度★☆☆
- 農園
農園単位で個別に取引されているコーヒーがある。
そういった農園は品質の高いものを生産している傾向が強いので、農園名まで書いてあるものは注目してみると良い。 - 品種
「ブルボン」「ゲイシャ」「ティピカ」「カトゥーラ」などが代表的な品種。
特に近年注目をあつめているのがゲイシャ種で独特のベリー系の香りを持っていることが多い。 - 認証
有機栽培や自然保護など様々な目的を持った認証がある。
ロゴマークが表記されている場合が多いので、気になるものはチェックしてみるとよい。
エチオピア産の豆にはブルーベリーやドライベリーを思わせる独特の香りを持つ豆が多いです。その香りは「モカ香」と呼ばれ、古くから高く評価されています。特に、後から解説する「ナチュラル」という製法で作られた豆でよく感じられます。