こんにちは、日本バリスタ協会公認のバリスタ、にっしーと申します。
今回取り上げるのはフレンチプレスです。
紅茶を淹れる際にも使用される器具ですが、実はコーヒーを淹れることも可能です。
この器具の特徴は、極めてシンプルな抽出手順です。
そのため、初心者の方でも安心して始めることが出来ますよ。
「自分でコーヒーを淹れてみたいけど、難しいのはちょっと苦手だな」という方にお勧めの一品です。
また、抽出ミスによる味の劣化が起こりにくいため、豆の持つ個性を感じ取りやすいと言われています。
ここでは、器具の選び方や淹れ方、レシピとそのアレンジ方法までを紹介していきます。
目次
基本レシピと淹れ方
では、まずは皆さんが一番気になるであろう基本レシピと淹れ方からみていきましょう!
また、淹れ方を知ったうえで、メリット・デメリットや器具の選びのポイントをお読みいただいた方が、ぐっと理解度が深まると思いますよ。
では、まずは基本レシピからです。
基本レシピ
こちらが、1杯分の基本レシピです。
2杯以上を一度に入れる場合は、『杯数 × 基本レシピ』で計量して頂いてOKです。
一覧表を参考に準備してください。
2杯分 | 3杯分 | 4杯分 | |
粉 | 30g | 45g | 60g |
お湯 | 440ml | 660ml | 880ml |
淹れ方
それでは、いよいよ淹れ方に入っていきましょう。
まずは必要なものを確認していきましょう!
準備するもの
以上が準備物となります。
コーヒー豆はお好みのものを選んでいただいて大丈夫ですよ。
もし、どんな豆を選べばいいかわからない!という方がいらっしゃいましたら、
以下のページで「豆の選び方」を詳しく解説していますので、参考にしてください!
さて、必要なものは全部揃いましたか?
それではいよいよコーヒーを淹れていきましょう!
淹れ方
それでは一緒にコーヒーを淹れていきましょう!
各ステップで簡単な解説を入れながら進んでいきます。
手順は1杯分の分量で解説していきます。
2杯以上を淹れる場合も手順は同じなので、分量だけ読み替えてください。
①お湯を沸かす
まずはお湯を沸かします。
これがないと始まりませんよね!
ポイントとしては、レシピよりもたっぷりと沸かしましょう!
抽出以外に器具やカップの温めにも使うからです。
②カップと器具を温める
お湯が沸いたらカップとフレンチプレス本体にお湯を入れ温めます。
沸かしていたお湯の火を止め、温度計を入れます。
90℃になるまでお湯を冷ましましょう。
冷めるのを待つ間に次の作業に取り掛かります。
③コーヒー豆を準備する
コーヒー豆を 15g 計量します。
もしコーヒーミルをお持ちでしたら淹れる直前に挽いてください。
風味が格段に良くなりますよ!
コーヒーの粉が準備できたら、フレンチプレス本体のお湯を捨て、コーヒーの粉を入れます
④お湯を注ぐ
粉の入った本体をはかりに乗せ、メモリを0にリセットします。
そしてタイマーをスタートさせる準備もしましょう。
抽出には4分かかるので、4分にセットします。
お湯が90℃になったことを確認したら、まずはタイマーをスタートさせます。
その後すぐに本体にお湯を注ぎ始めましょう。合計220gまで注ぎます。
お湯は粉全体が湿るように注ぎましょう。
円を描くように注ぐより、フレンチプレス本体を回す方が全体に注ぎやすいですよ。
⑤フタを閉めて4分待つ
お湯を注ぎ終えたら、フタについている棒を一番上まで引き上げ、本体にかぶせます。
あとは4分経つまで静かに待ちましょう。
抽出中にゆすったり、かき混ぜたりすると抽出が進みすぎて雑味が出やすくなります。
注意しましょう!
⑥コーヒーをろ過して完成
4分経ったらフタについている棒を一番下までゆっくりと押し下げます。
最後にカップに入ったお湯を捨て、コーヒーを注げば完成です!
本体に入っているコーヒーは全てカップに注ぎましょう!
本体に残しているとさらに抽出が進み、雑味の多いコーヒーになってしまいます。
レシピ調整のポイント
さて、みなさん基本レシピのコーヒーを飲んでみていかがだったでしょうか?
「おいしい」と思った方もいれば「もうちょっと濃いめが好きだな」なんて思った方もいるかもしれませんね。
どちらも正解です◎
ここまでお伝えしたレシピや淹れ方はあくまでも「私がおいしいと思うコーヒー」の淹れ方です。
しかし、皆さんが感じるおいしいコーヒーとは少し違うかもしれません。
我々バリスタは、「お客さんにとっておいしいコーヒー」を淹れることを大切にしています。
そのため、相手の好みや気分に合わせてコーヒーを淹れ分けるポイントを心得ています。
ここでは、そんな、プロも現場で使っている淹れ分けのポイントを特別に紹介していきたいと思います。
このポイントを押さえておけば、「自分にとっておいしいコーヒー」はもちろん、
「相手にとっておいしいコーヒー」も淹れられるようになりますよ。
ぜひ、おいしいコーヒーで大切な人を幸せにしてあげてはいかがでしょうか◎
アレンジポイント1:粉の粗さ
・粉を細かくする ⇒ 苦み成分が多く抽出され、しっかりとした味わいになりやすい
・粉を粗くする ⇒ 酸味成分が多く抽出され、すっきりとした味わいになりやすい
まず最初はコーヒーの粉の粗さです。
とてもシンプルに言うと、細かくすれば濃く、粗くすれば薄くなります。
ではなぜこうなるのでしょうか、簡単に解説してみます。
コーヒーの粉がお湯に触れると、最初に酸味成分が抽出されます。
その後、しばらくすると良い苦み成分が出始め、最終的には悪い苦み(いわゆる雑味)が出てきます。
粉の粒が大きいと、中心部までお湯がしみ込むのに時間がかかりますよね。
つまり、「酸味→良い苦み→悪い苦み」という抽出の移り変わりが、ゆっくりになるということです。
結果的に、同じ抽出時間でも、苦みの成分が多く抽出される前にカップに注ぐことになるため、
苦みの少ないすっきりとした味に仕上がります。
粒が細かい場合はその逆のことが起こるわけですね。
フレンチプレスの場合、粉をお湯に浸けてしっかりと抽出するので、
粉の粗さは「中挽き」~「中粗挽き」の間で調整するとうまく淹れやすいですよ。
さて、小難しい話になってしまいましたが、もちろんこれは理屈上のお話です。
どんなコーヒー豆でも必ずしもそうなるわけではありません。
例えば、深煎りの豆はもともと豆に含まれる苦み成分がの割合が多いため、粗く引いても苦みがしっかり出る場合が多いです。
粉の粗さや焙煎度と風味の関係については以下の記事にまとめております。
気になった方はチェックしてみてください!
アレンジポイント2:浸ける時間
・長くする ⇒ 成分が多く抽出され、しっかりとした味わいになりやすい
・短くする ⇒ 成分が多く抽出され、すっきりとした味わいになりやすい
次は浸ける時間の長さです。
このポイントはイメージがわきやすいのではないでしょうか。
浸ける時間が長ければ、コーヒーの成分がたくさん溶け出すのでしっかりとした味になります。
短い場合はその逆ですね。
このポイントにおいて「長くする」場合は少し注意が必要です。
あまりに長く浸けすぎると、嫌な苦みまで抽出され雑味の多いコーヒーに仕上がってしまいます。
最長でも5分程度にとどめておきましょう!
それ以上浸けておくと、雑味の主張が強くなってしまう可能性が高いです。
アレンジポイント3:粉量と湯量
・粉量を多くする or 湯量を少なくする
⇒ お湯に対する成分の割合が多くなり、しっかりとした味わいになりやすい
・粉量を少なくする or 湯量を多くする
⇒ お湯に対する成分の割合が少なくなり、すっきりとした味わいになりやすい
こちらもイメージしやすいですね。
粉を多くしたり、お湯を少なくすると濃いコーヒーになります。
逆に、粉を少なく、お湯を多くすると風味はすっきりめになります。
ポイントでは粉量と湯量を一緒に書いていますが、必ずしも2つを同時に変える必要はありません。
どちらか片方を調整するだけでも風味は十分変化しますよ。
おすすめの調整範囲としては、
コーヒーの粉は12g ~ 18gの間、お湯の量は200ml ~ 240ml の間で調整するとうまく淹れやすいです。
アレンジポイント4:お湯の温度
・お湯の温度を高くする
⇒ 成分が抽出されやすくなり、しっかりとした味わいになりやすい
・お湯の温度を低くする
⇒ 成分が抽出されにくく、すっきりとした味わいになりやすい
お湯の温度が高くなると、コーヒーの成分を抽出する力が強くなります。
そのため、注ぐお湯の温度を高くするとしっかりとした風味になりやすいです。
ただし、成分を抽出する力が強くなる分、雑味も出やすくなってしまいますので、
あまり高温にしすぎるのもよくありません。
おすすめの範囲としては、85℃ ~ 92℃の範囲で調節してみると良いかと思います。
さて、ここまでで4つのポイントを紹介しました。
少し長くなってしまいましたので、ここで簡単にまとめておきたいと思います。
- 粉の粗さを細かくする
(中挽き ~ 中粗挽き) - 浸ける時間を長くする
(3分 ~ 5分) - 粉量を多くする
(12g ~ 18g) - お湯の量を少なくする
(200ml ~ 240ml) - お湯の温度を高くする
(85℃ ~ 92℃)
- 粉の粗さを粗くする
(中挽き ~ 中粗挽き) - 浸ける時間を短くする
(3分 ~ 5分) - 粉量を少なくする
(12g ~ 18g) - お湯の量を多くする
(200ml ~ 240ml) - お湯の温度を低くする
(85℃ ~ 92℃)
以上がここまでに紹介した調整のポイントでした。
たくさんのポイントを紹介しましたので少し戸惑ってる方もいるかもしれませんね。
しかし、これら全てのポイントを一度に変える必要はありません。
1つか2つ ほど変えるだけでも風味は十分変わりますので、少しずつ試してみてください。
フレンチプレスのメリットとデメリット
それでは次に、フレンチプレスを使うメリットとデメリットについてまとめていきたいと思います。
メリット
●手順が簡単
第一に挙げられるのが抽出手順の簡単さですね。
粉とお湯を入れて、時間が来たらフィルタを押し下げるだけなので、ほぼ失敗することがありません。
そのため、今までコーヒーを淹れたことが無いという方でも安心してトライすることが出来ます。
●抽出のブレによる味の変化が少ない
ひとつ前のポイントと関連してきますが、
抽出手順がシンプルなため、味のブレが非常に少ないというメリットがあります。
例えばハンドドリップなどでは、同じ豆、同じ器具を使ったとしても、
淹れる人によって味の違いがどうしても出てしまいます。
しかし、フレンチプレスではそれがほぼありません。
そういった点から、豆の個性を引き出しやすいと言われたりもします。
●一度で簡単にたくさんの量を抽出できる
大きなサイズも販売されていますので、一度にたくさんの量を淹れることが出来ます。
またその際の抽出方法が変わらないのも大きな魅力です。
少しピンと来ないかもしれませんのでハンドドリップと比べてみましょう。
例えばハンドドリップで2杯分淹れるとします。
「1杯分の倍のレシピで淹れれば良い」と思いがちですが、実はこれはNGです。
そうすると、大抵の場合かなり濃い味のコーヒーができてしまいます。
そのため、いつもと同じ味にしようとすると、粉量や淹れ方などを調整する必要があります。
つまり、簡単に言うとハンドドリップで複数杯同時に淹れるのは意外と難しいのです。
しかし、フレンチプレスではそういった調整がほぼ必要がありません。
なので、家族分を一度で淹れるといった場面でも活躍してくれますよ。
デメリット
●コーヒーに微細な粉が残る
フレンチプレスのフィルターはペーパードリップなどに比べて目が粗いものがほとんどです。
そのため、ごく細かい粉を取りきることが出来ず、コーヒーに残ってしまいます。
その結果、ペーパードリップに比べて少し濁った印象のコーヒーに仕上がります。
慣れるとあまり気になりませんが、最初は少しざらつきを感じるかもしれません。
どうしても気になる場合は、挽いた粉を一度茶こしなどで振るいにかけると、
細かい粉をある程度取り除くことが出来ます。
●良くも悪くもいつもの味になりやすい
こちらはメリットと表裏一体です。
味のブレが少ないということは、逆に言うといつも同じ味になりやすいことを意味しています。
シンプルな抽出手順であるがゆえに、こちらで淹れ方を工夫する余地が少ないため、
淹れ方によって引き出す味を変えるといったことは少々苦手です。
器具選びのポイント
それでは次に選び方のポイントを3つ紹介していきたいと思います。
●適切なサイズ感
淹れ方のところでも触れましたが、出来上がったコーヒーはいつまでも本体に入れておくことが出来ません。
そのため、一度に飲み切れる量を考えて本体のサイズを選ぶことが大切です。
●フィルターの細かさ
デメリットにある通り、フレンチプレスで淹れたコーヒーには細かい粉が残ってしまいます。
フィルターの目が細かければ粉を取り除く力も高くなりますので、気になる方はチェックしてみましょう。
●接地面にカバーや脚がついているとベター
フレンチプレスは抽出に4分かかります。
実は、これは他の抽出器具と比べると長い部類に入ります。
そのため、「抽出中にコーヒーの温度が下がる」ということを考えてあげなければなりません。
特にテーブルに触れている底面からも熱が逃げていきますので、
本体の底にカバーや脚がついているものを選ぶと良いかと思います。
まとめ
さて、今回はフレンチプレスについて取り上げてきました。
フレンチプレスの魅力が少しでも皆さんに伝わったでしょうか?
これを機会にあなたの素敵なコーヒーライフが始まれば幸いです。
終わりに、ここまでお伝えしたことをまとめておきます。
最後までお読みいただきありがとうございました!
基本レシピ
・コーヒーの粉(中挽き~中粗挽き):15g
・お湯(90℃):220ml( =220g)
淹れ方
- お湯を沸かす
- 器具を温め、コーヒーの粉を15gと90℃のお湯を220g本体に入れる
- フィルタのついた棒を引き上げた状態でフタをする
- 4分静かに待つ
- フィルタを押し下げコーヒーをろ過する
- カップに注いで完成
レシピ調整のポイント
- 粉の粗さを細かくする
(中挽き ~ 中粗挽き) - 浸ける時間を長くする
(3分 ~ 5分) - 粉量を多くする
(12g ~ 18g) - お湯の量を少なくする
(200ml ~ 240ml) - お湯の温度を高くする
(85℃ ~ 92℃)
- 粉の粗さを粗くする
(中挽き ~ 中粗挽き) - 浸ける時間を短くする
(3分 ~ 5分) - 粉量を少なくする
(12g ~ 18g) - お湯の量を多くする
(200ml ~ 240ml) - お湯の温度を低くする
(85℃ ~ 92℃)
メリット
- 手順が簡単
- 抽出のブレによる味の変化が少ない
- 一度で簡単にたくさんの量を抽出できる
デメリット
- コーヒーに微細な粉が残る
- 良くも悪くもいつもの味になりやすい
器具選びのポイント
- 適切なサイズ感
- フィルターの細かさ
- 接地面にカバーや脚がついているとベター
基本レシピ
・コーヒーの粉(中挽き~中粗挽き):15g
・お湯(90℃):220ml( =220g)